海から侵略者がやってきた。海を汚す人類を懲らしめるために。
──のだが、この侵略者、海の家の壁を壊した弁償でバイトをしている。侵略はまっったく進まない。それどころか、誰よりも地上を楽しんでいるのは本人だ。
『侵略!イカ娘』はそういう作品だ。そして読み終わる頃には気づく。侵略されていたのは、こっちの心だったと。
何か起きたら駆け抜けていく
まず、話が短い。1巻の時点で19話も入っている。
1話ごとに何かが起きて、そのまま駆け抜けて、オチて終わる。この密度。「もう1話だけ」がいつまでも続いて、気づけば深夜になっている。
起伏のあるストーリーを追いかける漫画ではない。だから疲れない。なのに止まらない。妙な中毒性がある。
アニメも同じ作りで、1話の中に複数のエピソードを詰めてさくさく進む。原作の疾走感をそのまま映像にした構成だ。入口としても優秀だと思う。
掛け合いで笑わせてくるギャグ
この作品、ギャグのセンスが高い。
それも、ぶっ飛んだことを言って驚かせるタイプではない。言葉の使い方と掛け合いで笑わせてくる。ボケに対する返しの角度、会話のテンポ、その積み重ね。
だから読み返しても笑える。瞬間の勢いで笑わせる漫画は二度目に弱いが、この作品は会話そのものが面白い。何度でも効く。
一番地上を楽しんでいるのは侵略者本人
なんだかんだ、イカ娘が一番可愛い。
不思議な魅力がある。親しみやすさ、と言えばいいのだろうか。基本は子供っぽい。ちょっとアホだ。なのに、冷静なツッコミを入れる瞬間だけ妙に大人っぽい。この落差がいい。
そして、いろんなことに興味を持って、全力で地上を感じている。表情がコロコロ変わる。笑って、驚いて、泣いて、忙しい。
侵略しに来たはずなのに、誰よりも地上を楽しんでいる。その姿を見ているだけで頬がゆるむ。
キャラが増えるほど面白くなる
この作者は、キャラが増えれば増えるほど強い。
早苗はストーカーとか以前に人間を越え始めているし、千鶴はもう人間かどうか怪しい。3バカは、発明が天才的でも使うやつらがアホだとこうなる、という見本だ。濃いキャラが追加されるたび、掛け合いの組み合わせが増えていく。
しかも、キャラ自体が変わっていく。
渚は最初、イカ娘をまともに怖がる貴重な枠だった。それがだんだん、イカ娘のポンコツ侵略者ぶりに我慢できなくなり、むしろイカ娘を立派な侵略者に仕立て上げようとし始める。もはや侵略者マニアだ。鮎美は実はめちゃくちゃ変わり者だと分かってくる。シンディーは意外と悟郎と仲良くなっていくし、千鶴は悟郎のことが・・・?という場面まである。
キャラの追加と、キャラの変化。この2つで面白さが更新され続ける。だから飽きない。続けば続くほど面白くなる、珍しい作品だ。
付け加えるなら、これだけ変人だらけなのに、悪意で人を傷つけに来る者がひとりもいない。だから安心して振り回されていられる。
アニメの先にもっと深い海がある
アニメから入った人に伝えたい。あれでも控えめだ。
漫画のほうがキャラの設定は濃い。分かりやすいのが栄子で、アニメではイカ娘の姉的なツッコミ役。だが漫画では、ゲームこそ人生というレベルのゲーム好きという顔を持っている。
アニメに出てこなかった面々もいる。悟郎のライフセーバー仲間の非モテ格ゲーオタ、救護所の元ヤン看護師、ドジっ子の婦警。振り返ると、とにかくキャラが多い作品なのだ。
そして漫画は、アニメの範囲が終わった後も長く続く。アニメで好きになったなら、原作にはまだ知らない海が広がっている。
心を侵略されに行かなイカ
イカ娘に侵略者の要素があるのかは、正直よく分からない。
やっていることは、バイトして、騒いで、友達と遊んで、変人たちに振り回されているだけだ。
侵略だけなら3バカのほうがよほど向いている。
でも、イカ娘にはなぜか好きになってしまう魅力がある。
地上の領土はひとつも取れていないのに、周りの人間の心は確実に侵略している。
次はあなたの番だ。海の家れもんで待っている。
同じようにゆるくて笑える沼を探しているなら、こちらの沼ガイドもどうぞ。
参考情報源
- 安部真弘『侵略!イカ娘』秋田書店(週刊少年チャンピオン連載、全22巻)
- テレビ東京『侵略!イカ娘』公式サイト キャラクター紹介
- Wikipedia「侵略!イカ娘」


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