今回沼へ誘いたいのは『久保さんは僕を許さない』だ。
甘い。とにかく甘い。だが読み終えてみると、甘さ以上に「モブだった主人公の日常が色付いていく物語」として心に残る。ちょっと不思議なラブコメだ。
全12巻で完結済み。アニメ化もされている。今から沼に落ちるにはちょうどいいタイミングだ。それでは語っていく。
久保さんは僕を許さないはどんな作品か
まずタイトルから面白い。『久保さんは僕を許さない』と書いて、読みは「くぼさんはモブをゆるさない」。「僕」を「モブ」と読ませる。
主人公の白石純太は、隣にいても気づかれない存在感ゼロの「モブ男子」だ。クラスメイトどころか担任にすら認識されないレベル。ところが、隣の席のヒロイン級美少女・久保渚咲さんだけは、なぜか白石くんを見つけられる。そして今日もちょっかいをかけにくる。
公式いわく「ラブコメディの2歩手前」。恋と呼ぶにはまだ少し早い。でも確実に何かが育っている。そんな二人の距離感を描く作品だ。
作者や連載期間などの基本データは記事末尾にまとめた。
距離感がバグった久保さんの破壊力
この作品の入口は、間違いなく久保さんだ。
とにかく距離感がバグっている。付き合っていないのに、やることなすこと完全に恋人のそれなのだ。積極的にからかいにくるし、距離の詰め方が恐ろしい。いい意味で心臓が止まる。読みながら「こんなの好きになってまうやろ」と何度もつぶやくことになる。読めばわかる。
しかも久保さんは、ただ攻めるだけじゃない。やきもちは焼くし、ちょっとSだし、白石くんのことが好きすぎて隠しきれていない。かと思えば、自分で攻めておいて自分で照れる。この一連の流れが可愛すぎる。ページをめくる手が止まらない。
からかい系ヒロインの作品は世にたくさんある。だが久保さんの「好き」の隠せてなさは群を抜いていると思う。
絵とデフォルメの緩急が生む甘さ
そして絵だ。この作品、絵の力がすごい。
まず絵柄そのものが可愛くて綺麗。繊細なタッチで描かれる久保さんの表情は、それだけで癒しになる。表情がとにかく豊かで、セリフと絵が組み合わさった瞬間の破壊力が凄まじい。このコマだけで白飯3杯いける・・・というシーンが定期的に飛んでくる。
さらに上手いのがデフォルメとの緩急だ。普段は繊細に描く。そしてここぞという場面でゆるいデフォルメを挟む。この切り替えのおかげで、甘いシーンはより甘く、コメディシーンはよりクスッと笑えるようになっている。
チンピラまで優しい世界とサブキャラの魅力
『久保さん』の世界には、嫌な人間がほぼ出てこない。
主人公とヒロインはもちろん、その周りの人たちがみんな優しい。友達も家族も、なんならチンピラまで優しい。読んでいてマイナスの感情を抱く場面がほとんどなく、ひたすら和める。
サブキャラも粒ぞろいだ。個人的な推しは誠太くん。めちゃくちゃ正直で可愛い、この作品屈指の癒し枠だ。それから、漫画版は白石くんと久保さん、それぞれの家族関係もアニメより深く見られる。恋愛と関係ないほのぼのとした日常パートも良い。この空気感だけで読み続けられる。
意外なところでは、久保さんは料理とかが実はあまりできない。完璧美少女に見えて隙がある。そこも魅力だ。
モブだった白石くんの日常が色付いていく
ここからが、この作品で一番語りたい部分だ。
『久保さん』はラブコメとして紹介されることが多いし、実際ラブコメ要素は強い。だが全巻読み終えて一番印象に残ったのは、恋愛よりも「白石くんの学園生活の変化」だった。
誰にも認識されなかったモブ男子の日常が、久保さんとの出会いをきっかけに、どんどん色付いていく。友達が増える。周りに人が増える。物事がいい方向に進んでいく。白石くん自身も、だんだん積極的になっていく。実は白石くん、やろうと思えば認識してもらえるのだ。それをしてこなかっただけで。
タイトルの「モブを許さない」は、久保さんが白石くんにちょっかいをかけることだけを指していないと思う。白石くんがモブのままでいることを許さない。そしてモブを卒業した先に待っているのは、楽しい時間だった。そういう二重の意味がかかっているんじゃないか。
アニメでは恋愛の側面が目立った。だが漫画で通して読むと、この「日常が色付いていく物語」としての顔のほうが強く残るかもしれない。
恋の行方と綺麗な完結
で、肝心の恋の行方だ。
二人の距離感は最初から完全に恋人なのに、付き合っていない。「なんで付き合ってないんだ」と読みながら何度もツッコむことになる。進んでいるのかいないのかわからない。でも多分進んでいる。この、恋に恋と名が付く手前のじれったさこそが本作の醍醐味だ。
結末の詳細はここでは伏せる。ただ安心してほしい。この作品、恋愛ものとしてかなり綺麗に完結する。ためにためた分、終盤の展開は一気呵成。終わり方には意外性もあって、個人的には満足度の高い締めくくりだった。
全12巻というボリュームも、一気読みするのにちょうどいい長さだ。
久保さんの沼に落ちるなら今
まとめる。『久保さんは僕を許さない』は・・・
距離感バグりの久保さんに心臓を撃ち抜かれ、絵とデフォルメの緩急に癒され、優しい世界に和み、そして気づけば「モブだった白石くんの日常が色付いていく物語」に胸を打たれている。そういう作品だ。
完結済みだから、途中で待たされることもない。アニメから入るもよし、漫画で一気に駆け抜けるもよし。甘くて優しい沼だ。一緒に落ちてほしい。
漫画はAmazonで『久保さんは僕を許さない』をチェックできる。まずは1巻、久保さんの距離感を体験してみてほしい。
参考情報源
- 作品:『久保さんは僕を許さない』(読み:くぼさんはモブをゆるさない)
- 作者:雪森寧々
- 掲載誌:週刊ヤングジャンプ(集英社)、2019年47号〜2023年14号連載
- 単行本:ヤングジャンプ・コミックス、全12巻(完結)
- メディア展開:2023年テレビアニメ化
- 出典:少年ジャンプ+「久保さんは僕を許さない」作品ページ、Wikipedia「久保さんは僕を許さない」


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